【声マガ・インタビュー】鈴代 紗弓

【声マガ・インタビュー】鈴代 紗弓_01 インタビュー

PROFILE

アーツビジョンに所属する鈴代紗弓すずしろさゆみさんは、神奈川県出身の2月4日生まれ。『荒野のコトブキ飛行隊』(キリエ役)、『ぼっち・ざ・ろっく!』(伊地知虹夏役)『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』(サトノクラウン役)、『逃げ上手の若君』(亜也子)等に出演。2024年は、『2.5次元の誘惑』にノノア<乃愛>役で出演。
収録現場には三色ボールペンとマーカーを絶対に持っていくという鈴代さん。加えて欠かせないのが、マドレーヌなどのお菓子なのだとか。「小腹が空いた時のために、喉が乾燥しないような、ちょっとした一口ぐらいのお菓子を持って行きます。収録中にお腹が鳴っちゃうと、ノイズになっちゃうので」。そんな鈴代さんに、声優をめざしたきっかけや日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだこと、今後の目標を語っていただきました。

「自分の夢は自分の力で叶えたい」という想いで日ナレへ

【声マガ・インタビュー】鈴代 紗弓_02

声優という仕事を意識したのはいつ頃ですか?

小学校の卒業式の帰りに、将来の夢について話していたんですけど、その時に当時担任だった先生が、「紗弓は声が通るから声優がいいんじゃないか」と言ったのがきっかけです。
その前からアニメが大好きな子どもではあったのですが、「声優」という職業の存在は意識したことがなかったので、意識したのはこの時が初めてでした。

声優をめざしたきっかけはどのようなものですか?

たまたま聴いたラジオのパーソナリティが声優さんで、その時に「声優さんって、ラジオもやるんだ」と思ったのをきっかけに興味を持ってどんどん辿っていったら、歌を歌われていたりもしていて、お芝居だけじゃなくて、いろいろなことをしているのを知ったんです。
私自身、すごくお芝居にも興味があったんですけど、他にもいろいろチャレンジしてみたい子どもだったので、声優さんだったらそれができるかもしれないと思うようになって、中学2年生の時には声優になりたいと考えるようになっていました。

日ナレを選んだ理由を教えてください

当時の私は「自分の夢は自分の力で叶えたい」という意志をすごく強く持っていました。だから、学費も自分で出したかったんです。
そういう観点から選んだ時、一番現実的だったのが日ナレでした。私みたいな学生でも頑張ればなんとか通えるんじゃないか、と思わせてくれるお手頃な料金でした。
それと、週1回のコースがあったのも魅力でした。「これだったら、部活もやりながら通えるかもしれない。自分の希望条件にすごく合っている」と思いました。

【声マガ・インタビュー】鈴代 紗弓_03

入所した頃の日ナレの印象を教えてください

お芝居をしたことがなくて、演技も全くの初心者だったのですが、私はあえて何も知らないまま飛び込んでみようと思って行ったこともあり、入所した1年目はすべてが新しい経験の連続でした。
人前で大声を出したり、いきなり笑い出したり、といった羞恥心を捨てるレッスンがとにかく多くて、高校生だった私は自分が知らない、こんな新しい世界があるんだと、ひたすら驚いていました。

すぐにできるようになりましたか?

最初の半年くらいは大変でした。感情の起伏を表に出すタイプではなかったこともあり、余計難しく感じました。
感情を抑えたり、自分でコントロールすることは一般社会では、時に大事なことなんだと思うんですけど、芝居をするうえでは足かせになっちゃう節があると思うんです。
当時の自分はそんな足かせを取っ払っているつもりでいたんですが、無意識でブレーキをかけてしまっているところがありました。
鮮明に覚えているのは、あるクラスメイトが殻を破った瞬間を目撃した時のことです。もう衝撃でした。
ずっと何の理由もなく隣で大爆笑するとか普通ではあり得ないことなので「ちょっと大丈夫?」ってなるじゃないですか(笑)。始めのうちは違和感がありましたが、それは別に芝居を学ぶ上での世界では全く変なことじゃないんですよね。

毎週毎週がオーディションの感覚でレッスンに臨む

そうやって、クラスメイトの皆さんからも刺激を受けられたんですね

はい。一緒に夢をめざす同士であり、仲間であり、ライバルでもあるクラスメイトの方々と学び合える日ナレには、学校とはまた違う空気感がありました。特に年に1回のオーディションの前は今まで感じたことのないような緊張感が漂っていました。
自分の人生を賭けている方が多くいらっしゃるので、その空気感は特別なものがありました。それだけに仲間意識も強かったと思います。
居酒屋でバイトしている方や一般企業に勤めている方など、年代も境遇も様々でしたが、お互いめざしているものは一緒。そんな方々とレッスンが終わった後にご飯を食べながら、その日のレッスン内容について語り合った日ナレは、学生だった私にとって本当に刺激的で楽しい第2の青春の場所でした。

週1回のレッスンに臨むうえで心がけていたことはありますか?

週1回のレッスンが本当に短く感じました。同時に、残りの6日間をどう過ごすかがとても大切になってくることを知りました。
自分が成長していかないと、どんどん置いていかれちゃう感じがあったので、レッスンでは吸収するだけ吸収して次のレッスンまでの6日間で出来るだけブラッシュアップする。当時はその週1回を楽しみに1週間を生きていた感じですね。

入所当初の生活サイクルと現在の生活サイクルを教えてください

舌のストレッチやかつ舌といった基礎的なトレーニングは、ほぼ毎日やっていました。お芝居のことを考えない日がないってくらい、本当に一生懸命でした。
週に1回のレッスンでどれだけ自分を見せられるかが大事だと思っていたので、毎週毎週がオーディションの感覚でレッスンに臨んでいました。
正直今は仕事のチェックに時間を費やすことが多くて、基礎的なトレーニングに割ける時間が養成所時代に比べて減ってしまっているのが課題だと思っています。この数年は特に、基礎はいくらやっても足りないし、やり続けなきゃいけないと改めて感じています。

講師から教わった演じることの楽しさと奥深さ

基礎科のレッスンで印象に残っていることがあれば教えてください

沢山ある中でも特に印象に残っているのは、山に登る設定のエチュードです。「今から山に登って、ここが頂上だと思って叫んでみよう」という設定だったのですが、当時、私は山に登ったことがなかったんです。
なんとか想像力を膨らませてレッスン場を山だと思わなきゃいけないと思案していた時、講師の方が「ここが山で頂上に登ってきたよ。 目の前には空が広がっている。太陽の光が眩しい。何を叫ぶ?」など、細やかに状況を説明しながら私たちを導いてくださったんです。すると、どんどん私の頭の中で情景が出来上がっていきました。
風はどのくらい吹いているのか。太陽はどのくらい眩しいのか。周りに人はいるのか。足場はどんな感じなのか。寒いのか、暑いのか。すべてが補完されていく感覚がその時ありました。
登山の経験がないので分からないはずなのに、自分の中の五感がまるでそこにいるかのような感覚になったんです。「これがお芝居をするうえで大事なのかもしれない。楽しい!」と思ったことをよく覚えています。

本科のレッスンでは主に舞台形式のお芝居を学ばれていますね

戯曲を使った初めての舞台稽古があったのですが、その作品で演じた役の出だしのセリフでなかなか声が出なくて苦労しました。
それは単に声量の大小という問題ではなくて。実際にお客さんに声を届かせたうえで作品として成り立たせるとなると、ちょっと大きく出さないといけない、聞かせないといけない。リアルなものをリアルにやりすぎるとパッケージにならない。そこの違いが、自分にはすごく難しかったんです。「自然にやるとこうなんだけど、これだと駄目なんだ」って。
それに気がついてから何度も何度も同じセリフを練習し続けたある日、突然出せるようになったんですよ。
この時が「こうやって発声すればいいんだ!」というコツを掴めた瞬間でした。講師の方もすごく褒めてくださいました。「それだよ!」って。それからは表現の方に意識を振り切ることができるようになったので、あのレッスンは自分にとってすごく大事なものだったな、と思っています。

研修科でのレッスンで印象に残っていることがあれば教えてください

研修科では、声優に必要なスキルをメインで教えていただきました。講師の方からは「型にはまるな」ってよく言われていて、どうしても普通になってしまいがちだった私のお芝居の殻を破らせてくださいました。
具体的には、変な声や汚い声が出ても臆さず演じ切るなど、普通だったら不自然だと思われそうな表現をどう成立させるかを教えていただきました。この時のレッスンを通して、爪痕をどれだけ残せるかというマインドを手に入れられたのは、私にとって大きな財産になりました。事務所に所属できたのも、基礎科、本科で培ったものを活かしながら研修科で学んだ日々があったからだと思っています。

すべての経験が活きてくるのが声優という職業の魅力

事務所に所属したのはいつですか?

研修科1年目の終わりです。当時、短大の1年生で、2年生になったら就職活動をしないといけないタイミングだったので、今年ダメだったらもうやめようって思っていました。
もう後がない状態で挑んだこともあって、すごく嬉しかったんですが、同時に身も引き締まりました。それは合格発表の電話を日ナレの事務局からいただいた時に、「4社ぐらい最終まで行って、他の3社は落ちました。その落ちた理由もきちんと考えたうえで、ここからがスタートラインだから頑張ろうね」というコメントをいただいたからです。その言葉はものすごく覚えています。

デビューが決まったのはいつですか?

2017年にアプリゲームで初めて声優のお仕事させていただきました。東京にあまり慣れていなかったので、駅もよく分からなかったですし、とても緊張していたこともあって、よく知らない駅に1時間前ぐらいに降りて、フラフラしていました(笑)。

初めて現場でマイクの前に立った時のことを教えてください

アプリゲームのお仕事は、ワード数こそ少なかったんですけど、3役ぐらい担当させていただいて、とにかく緊張マックスという感じでしたね。
その場では多分対応していたんだと思うんですけど、あまりの緊張で全部忘れちゃいました(笑)。 覚えているのは、収録が終わった後に初めてひとりでラーメン屋さんに入ったことくらいです(笑)。

ご自身の考える声優の仕事の魅力について教えてください

私がこの職業で一番好きなところは、無駄な経験が一つもないところです。楽しいことも苦しいことも、どこかでそれが活きてくるタイミングが声優であり役者をやっているとあったりするんです。それが何にも代えがたい魅力だなって思います。
セリフ一つひとつをどこまで掘り下げていくかって役者さん次第だと思うんですけど、掘り下げれば掘り下げるほど、その役に広がりがでてくるんですよ。例えば共通点がないように思えるキャラでも、過去にどういうことがあったのか、どういう経験をしたうえでこのセリフを言っているのかなど、感情をどんどん突き詰めて行くと、実は自分と共通点があったりとか。 「こういう経験って自分もあったな」とか、どこかで繋がるものがあったりして。自分の経験を役に落とし込んでお芝居をするという部分も声優の魅力の一つだと思います。

今後の目標、どんな声優になりたいか教えてください

必要とされる役者さんでありたいと思っています。「この人が現場にいると安心するよね」と思っていただける、安心して任せられる人になりたいですね。
この役を任せられるし、演じてもらいたいと思ってもらえる安定感も欲しいけど、爆発力も持っていたいなと思っています。そして何よりも、人間としてちゃんとした人でありたいですね。あらゆる意味で「またこの人と仕事をしてみたいな」と思ってもらえる人になれるよう、人間力も磨き続けていくというのが今の目標です。

声優をめざしている方へメッセージをお願いします

本当に声優って楽しいです。大変なことがないとは言いませんが、それ以上に楽しい時の濃度が高いので頑張れています。
ただし、覚悟を持って挑んでほしいとはすごく思います。今めざしている方はきっと、夢に向かって一直線だと思いますので、その気持ちを大切にしていただきつつ、経験はたくさんした方がいいと思います。
今の自分が養成所時代の自分に会えたら、「旅行や学生生活を楽しむとか、その時にしかできないことをたくさんした方がいいよ」って言うと思います。いろいろな経験をして、それをいずれ声優になった時に還元できるように頑張ってください!

プロフィール

鈴代すずしろ 紗弓さゆみ
所属事務所:アーツビジョン
主な出演歴
ぼっち・ざ・ろっく!(伊地知虹夏)
FAIRY TAIL 100年クエスト(トウカ)
逃げ上手の若君(亜也子)
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