【声マガ・インタビュー】渡辺 拓海

【声マガ・インタビュー】渡辺 拓海

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PROFILE

アーツビジョンに所属する渡辺わたなべ拓海たくみさんは、神奈川県出身の10月1日生まれ。『あんさんぶるスターズ!』(高峯翠役)、『銀の匙 Silver Spoon』(木野広行役)、『12歳。』(エイコー役)等に出演。2020年4月放送の『文豪とアルケミスト 〜審判ノ歯車〜』では、徳田秋声役で出演。
「すっごいお酒が好き」と弾ける笑顔で語る渡辺さん。今は、しそ焼酎にハマっているけれど、「飲み始めると美味しくていっぱい飲んでしまうので、お酒は休みの日だけにしています」と笑います。日本酒も大好きで、地方に行った時は、その土地の旬の魚をつまみに、地酒を飲むのが楽しみだそう。そんな渡辺さんに、声優をめざしたきっかけや日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだこと、今後の目標について語っていただきました。

基礎科で学んだことのすべてが今の自分に活きています

【声マガ・インタビュー】渡辺 拓海のインタビュー

声優という仕事を意識したのはいつ頃ですか?

母がアニメやゲームがすごく好きで、家に声優雑誌が置いてあるような環境で育ったので、意識以前の話で、気づいたら声優という職業があることは知っていました。

では、声優をめざしたきっかけを教えてください。

小学生の時はゲームプログラマーになりたいって思っていたんです。でも、中学時代にゲームがフルボイスになった頃、プログラマーもいいけど、声優みたいな表現の仕事もいいなって思い始めて。ちょうど同じ頃に、吹奏楽部のソロコンテストに出場したことも大きかったですね。チューバを演奏していた僕は、ピアノの伴奏付きでビートルズの『Hey Jude』を吹いたんですが、どういう曲なのか調べて、ここはこんな気持ちで吹いてみようとか考えて表現することがすごく楽しくて。こういう気持ちを大切にしたいなっていう思いが、大好きなゲームの声優に重なって、膨らんで、めざそうって思いました。

日ナレを選んだ理由を教えてください。

高校生で、学業も大切にしたかったので、週1回で学べることが一番大きかったです。実は、中学3年の進路相談の前に、母に「声優科のある学校に行きたい」って言ったんです。でも、母には、「高校は普通科に行って!」って言われまして。確かに、声優になった時に、普通の生活から見えるものや感じられるもの、吸収できるものは、すごく大事だよなと思ったので、僕も納得して。その代わり母には、「1年間自分でアルバイトしてお金を貯めるから、2年生になったら日ナレに通わせてほしい」って伝えました。

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入所した頃の日ナレの印象について教えてください。

なりたい世界のことが学べるから、すごく楽しかったです。レッスン日以外も、レッスンで習ったことを復習したり、次のレッスンに向けての予習をしたり、ドラマや映画やアニメをいっぱい観たり。高校にアクセント辞典を持っていって、休み時間にレッスンで使う台本のアクセントを調べたりもしていました。とにかく毎日が楽しくて仕方なかったですし、日ナレのレッスンが僕の生活の中心になりました。

基礎科のレッスンで印象に残っていることはありますか?

芝居をしたこともなければ、芝居について何も知らない、まっさらな状態で入ったので、全てが初めてだったんですけど、講師の方が、そんな高校生の僕に、芝居の基礎を全部、親身になって教えてくださって。プロになった今、テクニックだけじゃなく、役者としての志や理念やプライドに至るまで、教えていただいたこと全部が仕事に活かされています。

講師のひと言で挫折を克服

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本科はいかがでしたか?

舞台芝居を学んで、ますます芝居の楽しさにハマりました。そこで、レッスン以外でも演劇の演出家の方の本を読んだり、より自分の表現力を磨く時間を持つようになりました。ただ、本科の終わりにちょっと挫折してしまったんです。その時、高校3年生だったんですけど、高3って、進学を考えたり、就職を考えたり、すごくデリケートな時期ですよね。僕は声優になると決めていましたし、しかも、この年の所内オーディションで最終審査に残ったので、高校卒業と同時にプロになれるかもって喜んでいたんです。ところが、オーディションに落ちてしまって。高校の友人たちはみんな大学に行くとか就職するとか進路が決まっているのに自分はフリーターか? と。ただ、その頃、真剣にどうしようって悩みながらも、レッスンで芝居を学んだことで、声優より舞台役者への興味が強くなっていました。

その後どうされたんですか?

水族館でアルバイトしながら日ナレの研修科に通いつつ、知り合いの紹介で、劇団のお手伝いを始めて、舞台の作り手側の動きも勉強するようになって、裏方でもいいから芝居に携われればいいかなって思うようになりました。すっかり気持ちは舞台芝居に行っていて、研修科でマイク前のレッスンをしても、全く自分には響かなくて。自分は声優になれないんだって思っていましたね。

再び声優をめざす気持ちになったきっかけは?

研修科2年目の時、講師の方に「声優は役者という職業の中でも、表現する世界の中でも、かなり特殊な職業だ」って言われたんです。僕にはその発想が全くありませんでした。マイク前で芝居をするのが声優で、顔を出さないだけでしょって思っていたんです。でも講師の方は、そうではなくて、声優の仕事はすごく制約があるってことを教えてくれたんです。それまで体を使って芝居をすることをさんざん学んできたけれど、声優は声だけで芝居をする、声だけで心の動きを表現しなければならないんだって。それを聞いて、すごく面白そうだと思って、そこから声優の見方がガラッと変わって、本気でなろう、声優しかないって、スイッチが入りました。

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事務所に所属したのはいつですか?

スイッチが入った研修科2年目の終わりの所内オーディションに合格してアーツビジョンに所属しました。

合格した時の気持ちを教えてください。

実は、日ナレのクラスメイトだった井之上潤もこの時一緒にアーツビジョンに合格したんですけど、彼とはその年、2人でめちゃめちゃ一緒に頑張っていたんです。6月くらいに彼が「ボイスサンプルを作って、お互いに交換して、容赦なく思ったことを言い合おう」って声をかけてくれて。毎週のように、2人で本気でダメ出しをし合って。それで、一緒に同じ事務所に入れたから本当に嬉しかったですね。あの時間がなかったら、僕は今、声優の仕事をできていないと思います。

声優の仕事はいつまで経っても興味が尽きない

【声マガ・インタビュー】渡辺 拓海のインタビュー

初めてマイク前に立った時のことを教えてください。

アニメの初めての現場は『エリアの騎士』というサッカーを題材にした作品だったんですが、大先輩の方々が大勢いらっしゃるし、パス、シュート、ドリブル……と、アドリブもすごく多くて、汗と緊張が止まらない現場でした。

仕事が楽しいなと思えるようになったのはいつ頃ですか?

外画の『The Get Down』 とテレビシリーズの『ワルノリ!どっきりギャング』で主人公を演じさせていただいたんですが、経験が浅い頃、主人公ということで座長のような立場になって、現場の雰囲気や、自分が本当にしたいと思う表現をより真剣に考えられるようになりました。子どもの頃、ゲームプログラマーになりたかったように、僕は物づくりがすごく好きなんですけど、これらの作品と向き合う時間の中で、物づくりをみんなとしているっていう自覚を強く持てるようになったんです。それまでは、もっといいところを見せなきゃとか、爪痕を残そうとか一人で余計なことばかり考えてしまっていたんですけど、これをきっかけに、楽しんで演じられる余裕が生まれたように感じます。吹き替えは今も大好きです。

ご自身が考える声優の仕事の魅力について教えてください。

どれだけ勉強しても終わりがないことですね。どれだけアニメやドラマ、外画や舞台を観ても、どれだけ現場で先輩や後輩の芝居を見聞きしても、どれだけ音響監督さんにご指導いただいても、演技に完成はないし、音声表現の答えも無数にある。それだけに、壁にぶち当たってばかりです。一つ壁を乗り越えたと思っても、毎回違う壁が出てきて、それを越える作業をずっと続けて、前に前にって進んでいって。でも、だからこそ飽きないし、楽しくてやめられない。とにかくいつまで経っても興味が尽きないんです。むしろ、どんどん増していく。そこが一番の魅力です。

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今後、どんな声優になりたいですか?

アニメでも吹き替えでも、体温を感じられたり、呼吸を感じられたり、キャラクターがあたかもその場にいるような表現ができる声優になりたいです。そのために、まだまだ頑張らなければと思っています。よく「尊敬している人は誰ですか?」って聞かれるんですが、僕は先輩、後輩問わず、現場で戦っている人すべてを尊敬しているんです。現場の人たちは思考を停止していないので、僕もそうありたいです。

最後に声優をめざしている方へメッセージをお願いします。

偏見や固定観念を持たないでほしいです。自分がキレイだと思ったもの、汚いと思ったもの、好きと思ったもの、嫌いと思ったもの、そう思うことは自分の感性だし個性だから大切だけど、それだけで終わりにするのではなく、なんでキレイだと思うんだろうとか、なんで汚いと思うんだろうって考える。それが声優になるためには大切だし、僕は今もずっと考え研究しています。例えば、自分が面白い映画だと思っても、つまらないって評価されることってありますよね。そういう時、なんでそう言われるんだろうって。他の人の意見を、偏見を持たずに聞いて、そういう考え方もあるんだなって自分の中に吸収する。みんなが面白いと言っているけど、自分はつまらないと思った時は、なんで自分はつまらないって思ったんだろうかを考える。常にそうやって、感じたことの先にある“なぜ”と“どうして”を考えることが声優になるためには必要だと僕は思います。

プロフィール

渡辺わたなべ 拓海たくみ

所属事務所
アーツビジョン

主な出演歴

  • 文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~(徳田秋声)
  • あんさんぶるスターズ!(高峯翠)
  • ハイキュー!!(芝山優生)

渡辺 拓海

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