【声マガ・インタビュー】天﨑 滉平
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PROFILE
アイムエンタープライズに所属する天﨑滉平さんは、大阪府出身の10月22日生まれ。『ハイスコアガール』(矢口春雄役)、『DOUBLE DECKER!ダグ&キリル』(キリル・ヴルーベリ役)等に出演。2019年7月放送の『異世界チート魔術師』では、西村太一役で出演。
「今、夢中になっていることは?」の問いに、「タピオカ!」と目を輝かせて答えてくれた天﨑さん。甘いものとおもちが好きなので、タピオカドリンクはツボだそうで、仕事と仕事の合間にカフェに行く機会が増えたことから、最近、よく飲んでいるとのことです。特に好きなのは黒糖味。そんな天﨑さんに、声優をめざしたきっかけと日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだことや、今後の目標についてお話していただきました。
声優の魅力を知った深夜ラジオ
声優という仕事を意識したのはいつ頃ですか?
受験勉強しながら深夜ラジオを聴き始めた中学3年生の時でした。ある日、お目当ての番組が始まる10分前にすごく特徴的な声が聞こえてきて、それが声優さんの声だったんです。それまで声優という仕事を意識したことがなかったのですが、これをきっかけにいろいろな声優さんのラジオ番組を聴くようになり、アニメにもハマってたくさん観るようになりました。
では、声優をめざしたきっかけを教えてください。
大学在学中、就職を考えた時にずっと好きだったアニメ業界に関われる仕事に就きたいと思いました。ただ、自分は絵が描けないし今からでも挑戦できることって何かないかなと考えたところ、お芝居の経験はなかったけれど、声を出してしゃべることはできるから、声優をめざして養成所で学んでみたいと思ったんです。もし、声優になれなかったとしても、表現する術を学ぶことは、きっと他の仕事でも役に立つだろうし、とにかく後悔はしたくなかったので、やりたいことに挑戦してみようと思いました。
日ナレを選んだ理由を教えてください。
大学に通いながら行ける週1回のクラスがあったこと、家から通える距離に大阪校があったこと、そして、出身者が有名な方ばかりで、自分が尊敬する方も大勢おられたことから決めました。
ご両親の反応は?
「声優になるために養成所に通いたい」と伝えたら、とても喜んでいました。というのも、それまで僕はやりたいことがなかったので、親としては口には出さないまでも、この子はどうなりたいんだろうと、僕の将来に対して不安があったみたいなんです。生きていく中で、自分のやりたいことを見つけて、その道を選択できる人ってそんなに多くはないと思うので、好きな道に進もうとしている僕を見て、嬉しいという反応でした。
日ナレが僕の青春時代
入所した頃の日ナレの印象について教えてください。
アニメが好きで声優をめざしたので、養成所ではアニメ的な声の演技を学べると期待していたら、身体を使った表現からレッスンが始まったことに驚きました。でも、やってみたらすごく楽しくて。それまで自分の内にあるものを表現するなんて、恥ずかしくてできなかったけど、養成所はそれをやってもいい場所で、みんなそのために来ていて。そういう環境に入れたことがすごく嬉しかったです。
レッスンに通うのが楽しみだったんですね。
はい。クラスメイトはみんな声優になりたいという気持ちが一番の人たちで、僕と同じようにアニメが好きな人もたくさんいて。今までアニメが好きなことも含めて、自分を表現することが恥ずかしくてできなかった自分がちょっと窮屈だったんです。自分がこうなりたいという夢を語っても恥ずかしいと思われない場所に身を置けたことで、ようやく自分になれたというか自由になれた気がして、僕は一気に変わりました。日ナレに入ってからが、僕の中では青春できたなって感じで、本当に楽しかったです。
基礎科のレッスンはどうでしたか?
毎回、講師の方が自分の芝居に対してアドバイスをくださるので、次の週までに修正して、また見てもらうということを繰り返していました。ダメだと言われたら、なぜダメなのか、自分に足りないことは何なのかを帰りの電車の中で考えて、じゃあどういうふうにアプローチすればできるようになるのか、これをやってみよう、あれをやってみようと試行錯誤しながら自宅でやってみて、次の週のレッスンでまた見てもらうんです。毎回、難しさを感じていましたが、僕はその作業が大好きでした。
レッスン以外の時間も芝居の勉強に費やしていたんですね。
僕はレッスンを1週間自分が考えたことの発表の場だと思っていました。わからないままレッスンに来て、その場で教わろうという考えでは、せっかくみんなの前で表現できて、講師からアドバイスがいただける週1回の3時間のレッスンを有効に使えませんからね。自分だけでなく、他の人たちの表現も見られて、それに対する講師からのアドバイスも聞けるので、レッスンは得られるものがいっぱいの、とても貴重な場でした。
本科・研修科ではいかがでしたか?
受講生のレベルに合わせてレッスン内容が変わっていったので、新しいことがいっぱいできて楽しかったですね。本科には本科の、研修科には研修科の楽しさがありました。
日ナレに通って、自分自身、成長を実感できた出来事はありますか?
基礎科からの資料を全部残しているので、例えば本科になってから、基礎科でやった朗読をもう一度、自宅で録音して、聴き比べたりしていたんですが、そうすると、できることが増えていることに驚きました。日々、自分の成長はわからないけれど、1年前と比べるとこんなにも変わっているんだって、成長を実感できました。
それはとてもいい方法ですね。
日ナレに通い始めたばかりの頃の声からは、ハングリーさも感じられるので(笑)、今はちょっと、気持ちが足りてないんじゃないかって自分を見つめ直すこともできる、貴重な資料になっています。
日ナレで教わったことで、プロになった今、特に役立っていると思うことは何ですか?
たくさんありますが、精神的な部分は大きいですね。例えば、現場で共演者やスタッフの方々にご挨拶するのはもちろんですが、スタジオに入る時に、スタジオに対して心の中で「よろしくお願いします」って挨拶するとか、マイクや、自分が座る椅子に対しても挨拶するよう教えられたんですが、それによって、心を整え、スタジオを自分の安心できる場所にすることができるんです。あと、台本をもらったら、まず、自分が出るシーンを探すのではなく、台本に「よろしくお願いします」って挨拶して、1ページ目から開いて読み込んでいく。そんなふうに現場でお仕事をする時にもっとも大事な気持ちのあり方や、基礎の部分を、時間をかけて教えてもらったと思います。
ところで、大阪出身ということですが、方言を直すのは大変ではなかったですか?
セリフになると僕は大丈夫でした。でも、講師の方には、方言はただの癖だから直さなければいけないけれど、使えたら武器になるからちゃんと磨いてもおきなさいと言われました。実際、ありがたいことに、今、関西弁の役が増えているので、強みだなって思っています。
猫になりきるために深夜、公園通い!?
事務所に所属したのはいつですか。
研修科1年目の終わりに受けた所内オーディションに合格して、アイムエンタープライズに所属しました。
合格した時の気持ちを教えてください。
嬉しかったです。でも、ようやくスタート地点に立てたなと思ったので、気も引き締まったし、まだまだできていないこともたくさんあったので、より必死に努力しなければと思いました。
デビュー作について教えてください。
事務所の先輩の下野紘さんがメインで出られているシチュエーションドラマCD『月蝕のエゴイスト ‐愛しすぎて、壊したい‐』です。絵や映像がない声だけのドラマで、しかも収録も一人だけだったので、ものすごく難しかったです。初めてなので嬉しい現場ではあったけれど、課題もいっぱい見つかって、悔しい現場でもありました。
初めてのアニメの現場について教えてください。
人生相談テレビアニメーション『人生』という作品です。共演者の方と一緒に収録する初めての現場だったので、マイクの前に入れ替わり立つとか、皆さんが演じられている時にノイズを出さないようにするとか、表現する以外で声優としてやらなければいけないことがたくさんあったので、緊張しました。ノイズもどのくらいの音をマイクが拾うかわからなかったので、お腹が鳴らないようにしなきゃと思ったら身体がガチガチに硬くなっちゃって(笑)。同期でもあるヴィムス所属の八代拓さんも同じ生徒役で出ていて、現場を何度か体験している八代さんには「初めてにしては普通に見えたよ」って言ってもらえたんですが、内心はバクバクでした(笑)。
これまで演じられた中で、特に印象に残っている役柄について教えてください。
アニメ『鹿楓堂よついろ日和』の猫のきなこ役でしょうか。台本には「ニャー」としか書いてなくて、このニャーはどんな気持ちのニャーなんだ? って(笑)。とにかく、台本を読み込んで、考えて考えて。あと、自分が発したニャーが、録音を聴いてみると、自分が思っている音階ではなくて、夜中、公園とか猫の集まる場所に行っては、遠巻きに鳴き声をいっぱい聞いて、聞こえてくる音と同じ音が出せるようひたすら練習しました。その成果か、きなこがしゃべると、観ている人の家の猫がテレビ画面に寄っていくと話題になったんです!(笑)。あと、ラジオ番組のロケで猫カフェに行った時も、最初は全然僕に寄ってきてくれなかったのに、猫の鳴き声をしたら、ものすごく寄ってきて、遠くにいる猫も、何? って感じで振り返って。番組が盛り上がって、嬉しかったです(笑)。
ご自身の考える声優の仕事の魅力について教えてください。
声優の仕事はコップや動物、何にだってなれるしいろいろな職業につくこともできます。お芝居に限らず、歌やバラエティ番組、朗読劇、ラジオなどいろいろなことをやらせていただけるチャンスもある。僕は新しいことに挑戦するのが大好きだし、できないことがあったらどうやってできるようにするか考える作業が大好きなので、新しいことやできないことにたくさん出会える声優という職業は本当に好きで、そういう環境に身を置けていることにすごく幸せを感じています。
ご両親も喜んでいらっしゃいますね。
はい。今は離れて暮らしていますが、遠くにいても、テレビアニメやラジオ番組を届けることができたり、DVD作品を観てもらうこともできるので、こういう親孝行の仕方もありなのかなって感じています。
今後、どんな声優になりたいか教えてください。
活躍されている先輩方は、みんな年齢を重ねるごとに、キャリアを積むごとに、求められる役柄や表現が変わっていっていると思うので、僕も常に求められ続けるように、成長したいと思います。
そのためにはどんなことを意識していますか。
目の前にある一つひとつの仕事を一生懸命やることが一番大事だと思っています。一つひとつ100%熱意を持ってやり続ければ、知らず知らずのうちに自分の糧になっていると思うので、日々、真剣に取り組むこと。あとは満足しないこと。常に自分にとって、足りなかったことを考えられる自分でありたいと思っています。
最後に声優をめざしている方へメッセージをお願いします。
声優は、自分で見て、学び、考え、絞り出し、自分自身を磨いていかなければいけない仕事です。身体も精神も強くなければ続けられないので、大変なことを楽しめる性格でなければ、やっていけないかもしれません。どこまでいってもゴールはないし、つらいことが多いけど、好きな職業につけて、そこで人から評価してもらえることは最高に幸せなので、皆さんも頑張ってください。
プロフィール
天﨑 滉平
- 所属事務所
- アイムエンタープライズ
主な出演歴
- 異世界チート魔術師(西村太一)
- DOUBLE DECKER!ダグ&キリル(キリル・ヴルーベリ)
- ハイスコアガール(矢口春雄)