【声マガ・インタビュー】千本木 彩花

【声マガ・インタビュー】千本木 彩花

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PROFILE

アイムエンタープライズに所属する千本木せんぼんぎ彩花さやかさんは、埼玉県出身の11月24日生まれ。『帰宅部活動記録』(九重クレア役)、『甲鉄城のカバネリ』(無名役)、『ガーリッシュ ナンバー』(烏丸千歳役)等に出演。2019年4月放送の『超可動ガール1/6』ではベルノア役で出演。
配信と雑誌での購読はもちろんのこと、本当に気に入った作品は単行本で購入するというマンガ好きの千本木さん。守備範囲も少女マンガから少年マンガまで幅広く、最近のお気に入り作品についてとても楽しそうに語ってくれました。そんなマンガ愛あふれる千本木さんに、声優をめざしたきっかけと日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだことや、今後の目標についてお話していただきました。

忘れられない「腹から声を出せ!」

【声マガ・インタビュー】千本木 彩花のインタビュー

声優という仕事を意識したのはいつ頃ですか?

小学生の頃、『新世紀ヱヴァンゲリオン』が好きで観ていたのですが、その頃に声優というお仕事が存在することを知りました。

声優をめざしたきっかけを教えてください。

中学2年生の終わりから中学3年生にかけて、『けいおん!』等の深夜アニメを見るようになりました。その時に「声優さんって凄いな、面白そうだな」と思うようになったのがきっかけです。両親にそのことを話すと、「いいんじゃない」と言ってくれました。両親もアニメやマンガやゲームが好きだったので、とても応援してくれました。ですから声優をめざす過程で、親に反対されて説得するような苦労はありませんでした。

日ナレを選んだ理由を教えてください。

「養成所」で検索したら最初に出てきたのが日ナレでした。私は高校生の頃、吹奏楽部に所属していたのですが、放課後と土曜日は毎日練習があったので、週1回通える日ナレを選びました。

入所したのはいつですか?

高校2年生の時です。平日の放課後は部活に、週末の夜の時間帯は部活が終わったら、急いでレッスンにかけつけるといった生活でした。

実際に入所してみていかがでしたか?

私は大宮校に通っていたのですが、何から何まで新鮮で、「未知の世界に来た。がんばらなきゃ!」という気持ちでいっぱいでした。受講生の皆さんも幅広い年代の方がいらして、「これからは年齢の関係ない世界で戦っていくんだ!」と意気込んでいました(笑)。

初めての演技レッスンは緊張しませんでしたか?

むしろ「人前で何かを表現するのは面白いかもしれない」と楽しく感じました。今思えば、基礎科の講師の方が気持ちをとても大事にする方だったおかげかもしれません。もちろん滑舌や呼吸法などの技術も大切ですが、受講生である私たちが、あまり難しいことを考えないで、楽しくお芝居に接することのできる雰囲気を常に作ってくださいました。

講師の方のおっしゃっていた言葉で印象に残っているものがあったら教えていただけますか?

「チャンスはいつでもあるから、それをつかめるようにならなきゃダメ」という言葉はよく覚えています。また「現場に出てから学ぶものもある」ともおっしゃっていました。私にとって基礎科の1年間は、お芝居の楽しさを知ることのできた1年でした。この時に教わったことは、今も大きな支えになっています。

本科で学んだことで印象に残っていることを教えてください。

「腹から声を出せ」です。これは単に大きな声を出すという意味ではないんです。発する声の密度を高くするように、つまり「気持ちをしっかりセリフにのせてお客さんに届くように演じなさい」ということをおっしゃっていたのだと思うのですが、当時の私は、この言葉の意味が微塵もわかっていませんでした。指摘を受けるたび、心の中では「出しているよ!」と思っていました(笑)。その後、いろいろなお芝居を観るようになってから、ようやく講師の方がおっしゃっていたことの意味がわかるようになりました。今でも常にお仕事の際には、この言葉を思い出して、お腹から声を出すように心がけています。

【声マガ・インタビュー】千本木 彩花のインタビュー

大切なことを教えていただきましたね。

はい、本当にそう思います。本科の講師の方は舞台を主戦場としている方で、レッスンはとても厳しかったですが、私なりに努力して学んできた一週間の成果をレッスンで発表すると、違うところは違うとはっきりと指摘してくださり、良いところは褒めてくださいました。こちらが必死でくらいついていけばいくほど、その想いをしっかりと受け止めてくださる、そんな方でした。

研修科で教わったことで印象に残っていることを教えてください。

感情面を重視する基礎科と本科の講師の方と違って、技術面に重きを置いて教えてくださいました。マイク前のレッスンでも、「ここは大きく」「ここは小さく」と、見落としてしまいそうなくらい微妙なニュアンスまで一つひとつ拾い上げながら、じっくり自分の出している音を聞くことの大切さを教えていただきました。今までの自分では気づけなかった、新しい扉を開いていただいたと思っています。

マイナスからのスタートだった声優としてのキャリア

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事務所に所属したのはいつですか?

本科の終わりの時に受けた所内オーディションで合格して、アイムエンタープライズに所属しました。

合格した時のお気持ちを教えてください。

ホッとしました。私は事務所に所属する以前に、『帰宅部活動記録』というアニメ作品に出演していたので、オーディションには「落ちるわけにはいかない」というプレッシャーしかありませんでした。アニメだけでなく、ラジオにも出させていただき、そのうえ歌まで歌わせていただいていたので、これでもし落ちるようなら、「私には才能がないのかもしれない」と思っていました。だからもしこれでダメだったら、どこかで声優を諦めなきゃいけないとさえ思っていました。

今お話に出た『帰宅部活動記録』(以下『帰宅部』が、アニメ作品のデビュー作ということですよね。

はい。この作品は、私にとって第一のターニングポイントとなった作品です。『帰宅部』に出演する前と後では、お芝居に対する意識がまったく変わりました。

というのは?

それ以前の私は何も考えていませんでした。
日ナレを習い事の延長だと捉えていました。「声優になれたらいいなあ」くらいの気持ちしかなかったので、出演が決まった時も、アニメに出演できて嬉しいとしか思っていませんでした。ところが、実際に事務所に所属されている方々と現場でマイク前に立って、放送されたアニメを観てからは、「これはヤバイ!」と心底焦りました。

それはなぜですか?

声優としての自覚や技術、そして心構えまで、すべてが足りていなかったんです。現場で指示を受けても何もできなくて、自分の力の無さを思い知らされました。私の声優としてのキャリアは、ゼロどころかマイナスからのスタートでした。それなのに、そんな至らない私に、現場の方々は時間をかけてじっくりつきあってくださって、心から感謝しています。

【声マガ・インタビュー】千本木 彩花のインタビュー

千本木さんにとっては苦い声優デビューとなりましたね。

でも、この作品がなければ今の私はいません。悔しい思いもたくさんしたけれど、その分、数えきれないくらいたくさんのことを教えてもらえた作品でもあるんです。この作品がなかったら、私の意識は変わらなかったと思います。実は、『帰宅部』が放送されていた時期もレッスンに通ってはいたのですが、あまり身が入っていませんでした。でもこの作品の後、「何事もしっかりやろう」と気持ちを入れかえて、本科最後の発表会は、とにかく心を込めて演じました。その時に講師の方から「これくらいできるなら、最初からもっとくらいついてくれば良かったじゃないか」と褒めていただけました。

今のお話をお聞きした後だと、失礼ながら『ガーリッシュ ナンバー』で演じたヒロイン・烏丸千歳と千本木さんが、どうしても重なって見えてしまうのですが。

そうなんです! 千歳は新人声優なんですが、初めてメインで出演した作品での演技の評価が芳しくなくて、『帰宅部』の現場で苦戦していた私としては、他人とは思えないほど立場がリンクしているキャラクターでした。そんな千歳のセリフの中に、どうしても忘れられないセリフがあるんです。『自分を褒めてあげられるのは自分だけ。自分が好きな自分でいたい』というセリフなのですが、当時の私の苦しい心境を、そっくりそのまま肯定してもらえたようで、この回を演じた時は、とても救われた思いがしました。

不思議な巡り合わせですね。

はい。「自分がこうありたいと思う自分でいよう。あえて周囲に合わせようと無理しなくていいんじゃないか」と思えるようになって、この作品に出演したことで、とても心が楽になりました。

どんなに苦しくても、また引き戻されてしまう。それがお芝居の魅力。

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『甲鉄城のカバネリ』(以降『カバネリ』)のヒロイン・無名も、とても印象に残るキャラクターだったと思うのですが。

無名は、事務所に所属してから、初めてオーディションに受かった役でした。今思えば、キャリアも実力もない私を選んでいただいたことには、感謝しかありません。この作品は私にとって第二のターニングポイントになった作品で、現場では本当にいろいろなことを学ばせていただきました。

具体的には?

「作品の世界観の中に生きること」です。それまではキャラクターに自分のお芝居をあてていく、そんなイメージでアプローチしていたのですが、この作品では、自分がその世界の中に入っていく、というイメージでお芝居をするように心がけました。役者さんにはいろいろなタイプの方がいらっしゃると思うのですが、私は役にとことん没入する役者さんが好きだし、自分もそうありたいと思っています。
この作品では、『カバネリ』の世界に自分が存在するような、そんなお芝居を学ぶことができたと思っています。

では、演じている際に「自分は今、無名と気持ちがシンクロしている」と感じることがありましたか?

最初はそんな余裕はまったくありませんでした。でも無名は共感できるところが多いキャラクターだったので、回によっては没入しすぎて、終わった後も彼女のキャラクターを引きずっている時がありました。

やりきったという充実感があったのでは?

あるのは反省ばかりで、満足はできませんでした。自分がめざしているお芝居が何十年かけてできるようになるのか、それともどれだけ頑張ってもできるようにならないのか、それは今の私には正直わかりません。それでも理想とする演技ができるようになりたいと、意識することは大事だと思っています。

無名のどんなところが共感できましたか?

不器用なところです。この作品と出会うまでは、自分はかなり器用な方だと思っていたのですが(笑)、現場で「君は不器用だね」といろいろな方から言われたことで、「そうなのかも」と思うようになりました。私は警戒心の強い方で、初対面の方にあまり心を開く方ではないんです。2,3回会ったくらいでは容易に本心を見せない、ガードの固い性格です。でもいったん心を開くと、相手をとても信じちゃう。そういうちょっとアンバランスなところは自分でも不器用だな、と思います。

千本木さんの考える声優という仕事の魅力を教えてください。

非日常に行けることだと思います。毎日毎日違うことができるのでとても楽しいです。お芝居には正解がありません。これって逆の言い方をするなら、それぞれの役者さんが自分の中に、自分の正解を持つことができるということだと思うんです。そんないろいろな考えを持った人たちが集まって、ひとつの作品を作っていくなんて本当に面白いお仕事だと思います。

【声マガ・インタビュー】千本木 彩花のインタビュー

どのような声優になりたいか教えてください。

その場の空気を肌で感じることのできるような、気持ちの動く声優でありたいです。とても難しいことですが、自然に気持ちを動かして、観てくださった方に何かを感じていただけたら嬉しいですね。

最後に声優をめざしている方にメッセージをお願いします。

お芝居そのものを楽しむことが、一番大切だと思います。演じることはとても難しいけれど、とても楽しい。すごく悩むけれど、やっぱり楽しい。私自身、演じている最中は苦しいと思うこともあるし、「全然ダメじゃん!」という反省の繰り返しです。それなのに、終わったらすぐに、またお芝居の世界に引き戻されてしまう、そんな感覚があるんです。それって言葉にできないくらい演じることが好きだし、楽しいと思っているからなんですよね。正解は自分の中にあります。決して満足することなく、自分の感じたままに、めざす道を進んで行ってほしいですね。

プロフィール

千本木せんぼんぎ 彩花さやか

所属事務所
アイムエンタープライズ

主な出演歴

  • 甲鉄城のカバネリ(無名)
  • ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風(トリッシュ・ウナ)
  • 超可動ガール1/6(ベルノア)

千本木 彩花

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