PROFILE
アイムエンタープライズに所属する岡咲美保さんは、岡山県出身で11月22日生まれ。『音楽少女』西尾未来役の他、『ガンダムビルドダイバーズ』(ミユ役)、『オーバーロードⅢ』(フォアイル役)、『ハイスコアガール』(森役)などに出演。2018年10月放送の『転生したらスライムだった件』では、主人公リムル役で出演。
岡咲さんに生まれ故郷である岡山のお勧めスポットを尋ねたところ、倉敷の美観地区を挙げてくれました。ご自身のお気に入りのお店や、名物の青いアイスクリームの存在について丁寧に教えてくれました。そんな故郷・岡山を愛する岡咲さんに、声優をめざしたきっかけと日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだことや、今後の目標についてお話をしていただきました。
緊張を和らげてくれたクラスメイトの存在
声優という仕事を意識したのはいつ頃ですか?
私は中学生の時、バドミントン部だったのですが、その時に出会った友人たちから、声優というお仕事の存在を教えてもらいました。ちょうどその頃、ボーカロイドが流行っていて、みんなはその流れでアニソンやアニメにも夢中になっていました。そんな友人たちと話していくうちに、声優という職業が存在することを知って、ぼんやりとですが、素敵なお仕事だなあ、と思うようになっていきました。声優の存在を知ってからは、動画を見たり、アニメソングをカラオケで歌ったりしているうちに、自分の中で声優というお仕事への興味が広がっていきました。
声優への興味が、憧れからめざす対象に変わったきっかけがあったら、教えてください。
ある声優さんのモノマネをアニメ好きな友人の前で披露した時、声優に向いていると言ってくれたんです。アニメに詳しい友人がそう言ってくれるのだから、そうなのかも、と思ったのが、この仕事をめざすきっかけだったかもしれません。
それでは、日ナレ入所当初のお話を聞かせてください。
とても緊張していました。というのも、私は高校生の時に神戸校に通い始めたのですが、クラスメイトのほとんどが地元の方で、私のように県外から通っている人はあまりいませんでした。でもそんな私にクラスメイトの年上の方たちは、「美保ちゃん、美保ちゃん」と積極的に話かけてくれたんです。そのおかげで、緊張を和らげることができました。これは嬉しかったのと同時に、少し意外でもありました。
どうして意外だと思ったのですか?
当時の私は「やってやるぞ!」という気持ちが強すぎて、きっと話しにくい雰囲気があったと思うんです。でもそんな私に、クラスメイトの年上の方々は、とても優しく接してくれました。もちろん同じ目標を持って努力をしているという意味では、全員ライバルなのですが、休憩時間にはお互いに不安なところを話し合ったり、時には世間話をして盛り上がったりしました。
クラスメイトの、特に年上の方たちの存在は、岡山から通っている岡咲さんにとってとても大きかったんですね?
はい。私の場合、同じ年の人たちと一緒にいるよりも、年上の方々と一緒にいる方が、リラックスできることが多いんです。同世代ばかりがかたまると、同じ話題で盛り上がれる反面、気持ちが張り詰めてしまったり、ライバル心が強くなってしまって。その点、日ナレは幅広い世代の受講生の方がいるので、さまざまな人の考え方に触れることができたし、特に高校生だった私にとって、社会人の方とお話できるのはとても新鮮でした。
日ナレに通い始めた頃の生活サイクルについて、教えていただけますか?
私は週1回、金曜日のレッスンに通っていたのですが、あわただしかったという記憶しかありません。学業とクラブ活動の合い間を縫うように、どうにか通っているという感じでした。岡山から神戸までは新幹線で30分程度、乗り換えも含めて、神戸校までは1時間程度なので、決して遠い距離ではないのですが、それでも当時の私にとってはこの週1回のレッスンに通うだけでも大変でした。
決まりきった表現の向こう側に、本当の自分らしい表現がある
基礎科でのレッスンで印象に残っていることはありますか?
「外郎売」という題材を覚えてくるように、と講師の方から言われたのですが、それはかつ舌と発声を強化するためなんだろうな、と思っていました。もちろんそれもありましたが、できるようになったら、今度はある特定のキャラクターになって「外郎売」をやるという課題を出されました。私にはそのような発想が全くなかったので、とても新鮮でした。
実際にやってみて、どんな発見がありましたか?
ある人は子どもで演じたり、またある人は老人で演じたりしたのですが、そのキャラクターごとに、当然、声の高さや話すテンポも変わるし、もっと言えば、その人その人で同じ老人でも演じ方がそれぞれ違う。私も含めた、受講生みんなが違う角度から演じるのを体験した時、表現の幅ってこんなに広いんだ、という発見がありました。そして自分が思っているよりはるかに表現って、もっともっと大きなものなんじゃないか、と感じてワクワクしたのを鮮明に覚えています。
この時のレッスンで、岡咲さんの演技に対する考え方は変わりましたか?
はい。基礎科の講師の方から「教わったことを鵜呑みにしてはいけない。自分の中でしっかりかみ砕いてから、演じることが大切」と教えていただいたことが今も忘れられません。教わったことを鵜呑みにしないということは、他の誰かじゃなくて、私にあった、私だけの表現方法が必ずあるんだということだと思うんです。その言葉を聞けた時は、とてもホッとしたし、嬉しかったです。
では、本科のレッスンの印象を教えてください。
上京してから本科のレッスンに通うようになったのですが、初めのうちは、クラスメイトのスイッチが入った時の演技にただただ圧倒されました。それにみんなとても積極的で。私は前に出るのが苦手な方だったのでみんな凄いなあ、と思いました。
そんな周囲を見て、ちょっと不安になりませんでしたか?
これがむしろ逆で、そういう積極的な人たちのレッスンへの取り組み方や、意見をどんどん取り入れることができたので学ぶものが多かったです。
本科の講師の方から教わったことで、印象に残っているものがあったら教えてください。
自分の中にあるパーソナルなものを大切にして欲しい、そのうえで決まりきったパターンで表現をしてはいけない、と教えていただきました。例えば女子高生を演じる場合なら、「常にキャピキャピしていて、高い声でしゃべる」といった一般的なイメージでキャラクター作りをせず、自分の性格や考え方にあった女子高生のキャラクターを作ることが大切なんだ、と。
それは正解がない分、可能性も選択肢も広がるとは思いますが、その分大変な作業ではありませんか?
そうですね。時間も手間もかかるし、精神的にも負担があります。でも、こうした地道な努力が、結果的に自分の表現の幅を広げる近道になるんじゃないかと思っています。私は基礎科でも本科でも、講師の方から自分らしさをとことん模索して見つけ出すこと、そしてそんな自分を認めることの大切さを教えていただきました。その教えが、今の自分を支える礎になっています。本当にありがたいことだと思っています。
キャラクターを掘り下げること、それは知らない自分を発見すること
事務所に所属してから現在まで、お仕事を通して心境の変化のようなものはありますか?
私は基礎科1年目の所内オーディションでアイムエンタープライズに所属したのですが、デビュー当時の私は、アニメの現場ではたくさんのスタッフやキャストの方に囲まれて、常に緊張しっぱなしでした。スタジオの中での自分の居場所がわからなくて、休憩中であってもどうしていいかわからず、リラックスできませんでした。
それは本番のマイク前でも?
はい。自分ができないと、そこで流れが止まってしまうんじゃないか、と考えて過度にかたくなっていました。でも『音楽少女』というアニメ作品と出会ったことで、そんな後ろ向きの感情を払拭することができました。この作品の現場は女性が多かったので、気持ちがほぐれた状態でマイク前に立つことができました。休憩中はリラックスして、本番では気持ちを切り替えて臨むことも自然にできるようになりました。この作品を経験して、オンとオフのメリハリの大切さを学べたのはとても大きかったです。
ご自身の考える声優というお仕事の魅力は何だと思いますか?
違うキャラクターを演じるたびにさまざまな自分に出会えることです。声だけでなく、そのキャラクターを研究するということは、結局もう一人の自分と向き合うことでもあると思うんです。この作業によって、自分では気づいていなかった性格や考え方を発見できるんです。まだまだ自分のことでわからないこともたくさんあるけれど、それって可能性があるともいえると思うんです。そして仕事を通して自分を知ることができるなんて、貴重な経験をさせていただいていると感じています。
ちなみに、この仕事を通して発見したご自身の意外なところを教えていただけますか?
思っていたよりも繊細なんだなあ、と(笑)。いちいち動揺したり、傷ついたりすることが他の同世代の人たちよりも多いみたいなんです。そういう部分が自分にもあることに最近初めて気づきました。でもそんな部分が自分の中にあるという事実を把握しておけば、自分の扱い方もわかると思うんです。
では動揺したり、傷ついた時、どうやって自分を励ましているんですか?
できなかった、失敗した、という時に自分で自分を否定しないように心がけています。ダメだった時はどこがどうダメだったかをひたすら考えますが、マイナスの方向に考えが向かないように気をつけています。日頃の私は心配症な方なんですが、本番では緊張よりも自分の表現を見せたい! という気持ちの方が上回るんです。だから、関わった作品を少しでも素敵なものにしたい、という気持ちが周囲の人や観てくれたファンの方々にしっかり伝わって、喜んでいただけたらとても嬉しいです。
今後の目標と、どんな声優になりたいか教えていただけますでしょうか?
抽象的な表現になるのですが、キャラクターや自分の存在を通して、見ている人にキラキラとした気持ちを伝えられたら、と思っています。キラキラというのは、トキメキであったり、癒しであったり、憧れであったり、という意味なんですが。自分が声優のお仕事に興味を持った時の高揚感を、私のお仕事を通して皆さんに感じていただけたら素晴らしいな、と思っています。もちろん、その域に自分が達しているかといったら、まだまだですが、いずれはなりたい、なるぞ、という高い目標を持ち続けることが、自分が理想とする声優への近道だと思っています。
最後に、声優をめざしている方にメッセージをお願いします。
まだまだ勉強中の私が偉そうなことは言えないのですが…。本気な人ほど、自分の欠点が気になって、壁にぶち当たると思うんです。そんな時は声優になりたい! と思った最初のワクワクした気持ちを思い出してください。その時の自分に立ち戻って、そしてその思いを維持し続けてほしい。そうすれば、自然に力が湧いてくると思うんです。とにかく「好き」、という気持ちを信じて頑張ってください!
プロフィール
岡咲 美保
所属事務所:アイムエンタープライズ
主な出演歴
転生したらスライムだった件(リムル)
音楽少女(西尾未来)
ハイスコアガール(森)
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