村瀬 歩さんインタビュー
2014年10月1日アニメイトタイムズ掲載インタビュー
PROFILE
村瀬 歩 12月14日生まれ。VIMS所属。
「日本ナレーション演技研究所」に入ったときのことをお聞かせください。入所したのはいつですか?
大学生のときに入所しました。学生時代は自由な時間が多かったので、このまま普通に過ごしていくのではなく、「なにか新しいことを始めたい」と思って通い始めたんです。
それでは数ある声優養成所のなかから、「日ナレ」を選んだきっかけは?
大学のころは京都に住んでいたので、東京ほど養成機関が多くありませんでした。そのなかで日ナレの大阪校は梅田にあり、立地がよくて通いやすかったからです。そして有名な方々をたくさん輩出しているのも安心感がありました。あと、当時の僕にとって重要だったのは受講料ですね。大学生でもアルバイトで貯めたお金で入れるのは大きかったです。
そしてもうひとつ、レッスンの時間が週に1回、3時間なんです。比較的大学のスケジュールに合わせやすかったのも、学生にとっては重要です。もちろん受講生は学生だけじゃなくて社会人の方々もいました。一番上の方は30代後半、一番下の方は10代でした。
実際に入って、思い描いていたイメージと相違ありましたか?
僕は声優についてそれほど詳しくなかったので、てっきり入所したらマイクの前で台本を持ってしゃべるのだと思っていました。ですが基礎科では発声とか体づくり、エチュードなどをやるんです。初めは「これが声優のレッスンなのかな?」と疑問に思っていましたが、現場でお仕事をさせていただくようになって、とても重要だということがわかりました。
レッスンのなかで印象に残っているのは、研修科のときの東村講師のレッスンです。東村さんには本当に感謝しています。僕は自分の声が特徴的なので、それまでは声を変えて感情を表現していました。だけどある日、演じ方で行き詰まっているときに、東村さんから「声の変化や調子で芝居をするんじゃなくて、気持ちが変化したら自然に声が変わるんだよ」と教えていただきました。この言葉をいただいてから僕のなかでお芝居に対する考え方が変わり、オーディションに受かるようになったのを覚えています。いまの自分が作られているのは、このときに出会った東村さんのおかげです。
日ナレ時代、レッスンのある日以外ではどのような活動をしていましたか?
カラオケに行って自主練をよくやっていました。僕は声が大きいので、家で練習をすると近所の迷惑になってしまうんです(笑)。なので誰にも迷惑のかからないカラオケに行って練習をしていました。それと、複数人で練習するときは公民館を借りて練習しました。実際のレッスンの時間は週に1回、3時間ですが、それ以外の時間も大事だなと感じています。一週間自主的に練習してきて、その成果を発表するのが日ナレのレッスンだと感じていました。
「日ナレは週に1回、3時間」と聞くと短く感じますが、本当に声優になりたいのだったら、どれだけ自分で練習するかが大事だと思うんです。もちろん僕だけじゃなくて、仲間たちもがんばっていました。
なるほど! レッスン以外での練習も充実させる必要があるのですね。
もしかしたら、すごく才能がある方は一度のレッスンでできるかもしれませんが、そんな人はめったにいなくて、僕を含めてほとんどの人は、いろいろやってみないとできるようになりません。これは勉強も同じだと思います。毎週のレッスンをボーッと待っていても進歩しないので、それまでの間に自分でなにができるかを考えながら通うべきだと思います。
村瀬さんは昔からマジメな性格でしたか?
僕はマジメですよ!…というのは冗談です(笑)。僕は学生時代から、スポーツ以外はなんとなくやっていても、そこそこできていたんです。でもお芝居はちゃんとやらないとなにも結果が出ません。だから日ナレに通い始めてからは、とてもマジメになったと思います。なにかマジメにひとつのことに取り組むのって、やってみると楽しくて。なんとなくやって、そこそこの結果が出るよりも、一生懸命努力をして報われたときの方が気持ちいいです。しっかりマジメに通って、本当によかったです。
最後に、これから声優をめざす読者にアドバイスやメッセージをお願いします。
僕もアドバイスがほしい!(笑)
一同:(笑)
では……僕もまだアドバイスを言える立場ではないのですが……。「声優になりたい」と思うきっかけは、なんでもいいと思います。僕はいまでこそ、本当に声優になってよかったと感じていますが、初めは大学の空いた時間をムダにしたくなくて通い始めてましたからね。
でも、通い始めたらマジメに取り組んでほしいです。養成所に通っただけでは、努力しないとなにもできません。たまに「なんとなく声優事務所に入りたい」という意見を聞くことがあるのですが、「なぜその事務所に入りたいのか?」というビジョンが固まっていないと声優にはなれないと思います。そして、声優になるためには、「今日はこれをやろう」、「明日はこうしよう」とか、日々の生活のなかに「芝居」を組み込んでいくのがいいと思います。
つい先日、日ナレ時代の友だちが声優事務所に入ったと連絡をもらいました。僕は嬉しかったですね! その友だちは、いままでずっと諦めずに努力をし続けたから、結果がついてきたんだと思います。僕は「努力は必ずしも実を結ぶわけではないが、成功の影には必ず努力がある」という言葉が好きなんです。ボーッと過ごしていてもなにも進みません。自分ひとりでもできることはたくさんありますけど、なにかアクションをしなければ始まりません。
たまに、過去に出演したアニメを見るのですが、「別の表現方法があったんじゃないかな、もっとやり方があったんじゃないか」と反省することがあります。その時は全力で演じていたのですが、いまでも反省や後悔の繰り返しです。常に自分の現状に満足しないで、もっともっといいお芝居がしたい、もっともっとキャラクターを表現したいと思う気持ちは大切だなと感じています。